熊本県45市町村のオープンデータ取組が最下位33.3%から95%を超えました!

2023年度に受託し遂行した熊本県の45市町村のオープンデータ推進の支援業務について、まとめてみました。
市町村でのオープンデータ取り組みが95%を超え、残る2か所もBODIK ODCSに参加され公開依頼もありましたので実質、熊本県の市町村は100%、オープンデータに何らか取り組みがされるようになりました。

熊本県の2023年度事業概要

オープンデータの取組みは、官民データ活用推進基本法により法的に義務付けられており、またデータ活用による社会のデジタル化・DXの実現のためにも必要不可欠ですが、2023年度当初は熊本県の市町村のオープンデータの取組み状況は低調でした。このため、熊本県内全体での社会のデジタル化・DXを後押しするために町村におけるオープンデータの取組みを推進するものです。弊所BODIKは、この事業を受託し、調査報告や研修、市町村各自治体のデータクレンジングやオープンデータ公開に至るまでのさまざまな取組について支援しました。

事業成果

2023年度当初、デジタル庁が公開している地方公共団体におけるオープンデータの取組状況(令和5年6月30日時点)によると、オープンデータに取り組む地方公共団体数の取組率は約81%(1,449/1,788自治体)とあり、都道府県別の市区町村オープンデータ取組率は熊本県が最下位の33.3%となっていました。

この7か月の事業の結果、熊本県における市区町村オープンデータ取組率は、95%を超える見込み(43/45)となりました。残る2つの自治体においてもBODIK ODCSカタログサイトはすでに公開されており、実際には100%が何らかオープンデータの取組を行っているという状況となりました。
更に熊本県市町村のデータが素晴らしいのは、この事業年度で熊本県が設定した共通オープンデータセットステップ1である5種類(公共施設、指定緊急避難場所、地域・年齢別人口、子育て施設、観光施設)すべてを公開された市町村が60%を超えている点です。同じ種類のデータセットが隣のまちにもあることで、(市町村の境に関係なく市民が行動するように)広域で同じデータセットを利用するサービスを可能となることにつながります。

対応状況とデジタル庁申請状況の推移

この事業の7か月において、
・当初の時期、数か所はすぐにオープンデータ公開に取り組んで頂きましたがここは元々取組予定で温度感が高い自治体と思われました。とはいえ、調査段階や市町村への研修などを行っている中ではほぼ横ばい状態であり未だ最下位の状況は続いていました。
・年末までの約2か月は、研修と並行して市町村自治体ごとにホームページ上でのデータ公開状況やデジタル庁への申請状況などを調査を行うとともに、データクレンジングなど何か支援が必要と思われる市町村へはTELやメールなどでご支援する事がないかを問い合わせを行いました。
・1月末は、県から全市町村へ依頼されていた締め切りになりますが、前記の個別の支援を1月に入ってもおこなっていたこともあり75%を超える状況にまで到達しました。
・75%を超えた後(年度末まで)が大変でした。例えば、オープンデータ推進ご担当者が元々兼務的な業務アサインの状況にあるような体制的にも難しい市町村がおもに残っていました。更に議会や選挙などのタイミングも重なり、オープンデータ推進にとって厳しい状況が続いている状況の中、我々BODIKとしても現地訪問しての作業支援やデータクレンジングの個別サポートなどをお手伝いすることで、市町村ご担当者にも頑張っていただき、最終的に95%を超えることができました。
一覧でみると次のような推移となります。

本年度の取組で苦労した点(我々BODIK目線)

  • 【共通データセット選定のための調査】
    公開いただくデータセットは同じ種類を複数の市町村から提供いただいた方が利用価値があがります。今回事業のご意向として、市町村から同じ種類の複数のデータセットを足並み揃えて提出いただくために、どんなデータから優先的に公開すべきかを県内団体などからアンケートを取る最初のフェーズがありました。
    しかし、実際に予定を超えるアンケート数を集めたものの、そのアンケート結果から何らかのデータセットに対する優先度、重みを読み取るまでの結果には至らず、どのデータもまんべんなく必要といったアンケート結果となりました。
    そもそも本来、すべてのデータを公開すべきであるとは当然との意見ももちろんありますが、まだこれから取り組みをはじめる市町村も多い中で「すべてのデータを出してください」といった依頼は大変困難になります。アンケートだけでは判断できないという結論とともに、共通データセット(まずは5種類)を選出いただくためにBODIK ODCSのアクセス数や先行事例調査、これまでのBODIKの経験、デジタル庁が公開している調査も含めて報告を行い、熊本県で共通データセットを決定していただきました。
  • 【市町村の推進担当者への支援】
    足並み揃えた共通データセットの公開のお願いとオープンデータに関する説明会が実施され、BODIKからは説明会において動機付けにつながるオープンデータの事例紹介、データ作成や公開・アプリ作成(データ利活用)のハンズオンなどをサポートいたしました。
    その後は、まだデジタル庁へ申請されていない状況、ホームページ上でのデータ公開状況などを調査し、各市町村個別の進捗状況をまとめました。まだこれから着手されるものと思われる市町村を優先的に、我々がデータ作成や緯度経度付与などを含むクレンジング作業などをご支援する必要が無いかを、個別に電話やメールなどでお問合せしながらお手伝いしていきました。
    数か月かけてずいぶん出そろって来る頃には、個別に訪問してデータ作成や利用規約作成のお手伝いなどや、デジタル庁への申請手続きのオンラインヘルプやBODIK ODCSのご利用希望があればオンラインでもオペレーション支援なども行いました。 
  • 【作業優先度の問題】
    オープンデータの推進ご担当者が明確にアサインされている比較的大きな市町村は、推進方法の説明や少ないサポートで推進していただけましたが、複数の業務を並行するようアサインされているご担当者の場合、例えば選挙や議会、災害対策など優先度の高い業務が入ってくると、とてもオープンデータ推進までの時間が取れないという状況があったようです。
    今回の推進期間においても、議会の時期にはなるべくこちらからもコンタクトしないようしたり、あるいは年度末の時期には首長選が重なる市町村も複数あり、お電話の時間さえも難しいというケースもありました。
    とはいえ、何とか推進したいというご担当者の思いも我々も感じておりましたので、BODIKとしては市町村のホームページから読み取れる公共施設や避難所一覧、観光施設、子育て施設などの情報をもとに緯度経度を含みデジタル庁の標準オープンデータセット形式でのデータ作成を支援したり、オープンデータの利用規約作成の支援、ホームページの記載内容の支援などを行い、データを提供してきました。

市町村のオープンデータを取組む上で良かった点

  • 【5つの共通データセットへの取り組み】
    1つのデータセットでも構わないのでまずはオープンデータを推進してみよう!といったスタンスではなく、最初から熊本県では本年度取組目標として5つの共通データセットを計画されたことは結果的に県下市町村のオープンデータ公開の質や量の向上に繋がっているようです。
    自治体内でオープンデータ推進する担当者だけが頑張ってデータ作成するのではなく、まず各データをもつ原課へ個別に依頼する動きへとつながったのではないかと思われます。
    このことは、市町村の庁内でも担当者ひとりがオープンデータを推進するものではなく、データを持つ原課とのつながりも意識されたことは今後の継続的な取組にもつながるのではないかと思われます。今回は原課からデータが集まった段階はまだ標準フォーマットにはなっていないケースも多く、BODIKとしてもクレンジングを支援することで、オープンデータ推進者の負担を少しでも軽減でき、推進が加速できたのではないかと考えています。
  • 【人のつながり】
    オープンデータやデジタル化を推進する推進ご担当者も人ですから、何が原因で推進が止まっているか(我々ISITが何を支援したら先に進んでいただけそうか)、何度か連絡をさせていただくことでも安心感につながり、信頼できる関係性ができた所は加速して推進していただける所もあったと思います。
    ただしつこく連絡やお願いをするのではなく、ここをお手伝いしますので、我々が手を出せない部分はお願いできますでしょうか、といった風に、御自治体のオープンデータを一緒に推進する仲間としてご納得いただけるか、といった観点でご支援することも場合によっては大切であると思いました。
  • 【シビックテック連携】
    オープンデータを公開した後は、「何に使われたの?」「意味はあったの?」と、オープンデータ推進のご担当者が問われることもあると思います。
    我々BODIKメンバーにシビックテックCode for Kumamotoを運営支援しているものがおり、今年のインターナショナルオープンデータデイでは市町村のオープンデータを使って見える化やアプリを作ってみよう、という利活用事例につながるイベントも行いました。この点を次の項で詳しく説明いたします。

インターナショナルオープンデータデイ

上記に記載したとおり、オープンデータ推進のご担当者がオープンデータを公開した後に「オープンデータは何に使われたの?」「意味はあったの?」と、問われることもあると思います。
シビックテックCode for Kumamotoでは、インターナショナルオープンデータデイで市町村のオープンデータを使って見える化やアプリを作ってみよう、という事例づくりにつながるボランティア活動も行いました。

インターナショナルオープンデータデイは毎年3月上旬に世界中でオープンデータをお祝いするイベント(ウィーク)です。Code for Kumamotoでは3/3(日)~3/6(水)の19時~21時の4日連続で、「好きな所の ~オープンデータで遊ぼぅ~」テーマのイベントを行いました。
参加可能な日のみ参加していただくという形で、のべ約10名の方々に参加いただきました。いつものシビックテックメンバーに加え、新たに自治体職員さんも数名参加して頂きました。
イベントの内容としては、好きな地域でのオープンデータを使って、観光の一覧地図マップを作ってみる体験ができたり、地域のみなさんが役にたつような避難所一覧の地図を作ってみたりといった簡単なデータ利用(見える化)を体験するイベントになります。
イベントは毎日同じで次のプログラムです。
 ①30分:オリエンテーション(自己紹介、と本日の流れを説明)
 ②1時間:もくもく作業
  ・熊本県市町村でオープンデータがあるURL一覧(スプレッドシートにリンク)から好きな市町村の興味のあるデータをダウンロードし、
  ・GoogleマイマップやGlide、その他ツールで見える化(説明資料にリンク)して、参加者ができる形で見える化して、フォームで報告
 ③30分:成果発表(作ったツール、困った点や良かった点などを発表)
このイベント期間4日間でオープンデータを公開したほぼすべての市町村の何らかのデータを使って、50件以上というたくさんの活用事例(アウトプット)ができました。

参加いただいた中には、オープンデータを初めて使ってみるという方もおられ、次のような意見もいただきました。

  • データを見える化するってこんなに簡単なんですね(プログラマだけのものではないんですね)
  • こんな短時間でデータを分かりやすく見ることができる経験はとても良かったです
  • 自分で実際にデータを使ってみると(データの良し悪しや公開する意味が)よくわかります!
  • マップパズルで遊びましたが、これもオープンデータからできているんですね

まとめ&BODIKコミュニティ

今回の熊本県の事業を遂行させていただく中で、データをもつのは各原課も協力していただく必要があるためオープンデータ推進の担当者ひとりではなかなか推進ができない難しさや、実際にデータをデジタル庁の標準オープンデータセットに形式をあわせていく作業だけでも、意外と大変さがあるなど職員さんたちのご苦労の一部にも触れることができました。
たとえばデジタル庁の標準オープンデータセットに書式を合わせる際に次のようなケースがありました。
 ・BODIKユーティリティを使いcsv形式でデータを完成させた後、Microsoft Excelなどで開いてしまうと番地が数字に変換されたり日付の表記スタイルやが変わってしまう
 ・市町村ホームページの情報を参考にデータを作成をしたケースでは、住民に分かりやすい呼称などで記載された表記では住所検索ができない場合があった
 ・住所は正くとも緯度経度情報が正しく探せないケース(検索エンジンや国土地理院サイトでも住所が見つからないケース)もある
 ・昼休み中や15時前後に一度休業する店舗や施設におけるデータ項目の「開始時間」、「終了時間」表記方法が不明
 ・避難場所が広いエリアである場合に住所が2つあるケースでの住所表記方法が不明
このようなケースでは、デジタル庁の標準オープンデータセットのサンプルを使ったデータ入力において利用運用ルール(コツ)などが必要であろうという見解も持つことができました。

上記のようなケース・コツに関してもいずれまとめて共有していこうと思いますが、まずはBODIKで今後スタートしていくSlackのBODIKコミュニティのほうで記録しはじめています。
BODIKコミュニティは、オープンデータを推進する職員はもちろん、データ利活用の市民(シビックテック)やオープンデータを推進したい企業の方も、みなさんが無料で参加可能です。
BODIKコミュニティに関しては、固まり次第、別途案内される予定ですが、こちらの招待コードから先行して参加いただくこともできます → [BODIKコミュニティ招待コード]

お問合せ

この記事に関する内容に関しては、私どもBODIKのほう https://odcs.bodik.jp/contact/ にお問合せくださいませ。
熊本県への直接のお問い合わせは控えてくださいますよう、何卒宜しくお願い致します。

うえだ