イベント報告 「生成AIで自分のまわりがどう変わる?」

~オープンデータとシビックテックが生成AIで加速度的に変わる未来の姿~

2026-10-16 イベント

本年度もBODIK賞を提供している「アーバンデータチャレンジ2026」の中間シンポジウムが、今年は長崎で開催されました。国内のシビックテック関係者がせっかく九州に集まる機会ということで、その前日に福岡でもイベントを開催したところ、会場は満員御礼! LT枠も12名分すべてが埋まり、大盛況のイベントとなりました。

主催:公益財団法人九州先端科学技術研究所(ISIT) BODIK
共催:Code for Kumamoto、Code for Fukuoka、シビックテック九州、アーバンデータチャレンジ2026実行委員会

アーバンデータチャレンジ(UDC)2026とは

アーバンデータチャレンジは一般社団法人 社会基盤情報流通推進協議会(AIGID)が運営する「地域課題の解決を目的にした主に地方自治体を中心とする公共データを活用したデータ活用型コミュニティづくりと一般参加を伴う作品コンテスト」です。
北海道~沖縄の地域拠点が参加している全国的なコンテストとなっています。地域拠点は主に県単位のブロック参加であり、各地のシビックテック(Code for)などが数多く参加しています。

イベントの主旨

生成AIの進化により、誰もがデータを活用し、自らのアイデアを形にできる時代になりました。
人とデータと地域をつなぎ、一人ひとりが地域の課題や可能性を自分ごととして捉え、未来をつくる一歩を踏み出す。そんな事例が、各地で生まれています。
BODIKは、そうした実践の事例を共有し、立場や地域を越えた新たな出会いと、次の一歩につながる実践の場をつくることを目的に、このイベントを開催しました。

プログラム

  1. オープンデータで住民課題を解決するコミュニティと言われるシビックテック(Code for 〇〇)を日本で最初に立ち上げられた一般社団法人コード・フォー・カナザワ福島健一郎さんの基調講演
  2. BODIKの坂本さんによるBODIKセッション
  3. 全国(東京・宮城・福岡・飯塚・鹿児島など)から現地参加いただいた全12名による沢山の事例LT(ゆるい持ち寄り小話ライトニングトーク)

どんなお話があったの?

【基調講演】一般社団法人コード・フォー・カナザワ福島健一郎さん

シビックテックの実践: 市民が主体となり、ITやデータを活用して地域課題を解決する取り組みとして、次のような代表的な取り組みを紹介していただきました

  • 5374.jp(ゴミなし):ゴミ収集日が一目でわかるアプリ。GitHubで公開し全国140以上の地域に拡大された大きな事例
  • 能登半島地震コネクトマップ:令和6年能登半島地震の直後、市民が現地で携帯電波の開通状況を記録・共有するマップを開発・運用、2時間のスゴイ開発速度!
  • シビックテックに必要な姿勢:主役は「市民と課題」であり技術は道具。持続的な運用のための「組織」と、支援者ではなく「ジブンゴト」として取り組む姿勢が重要(大切)
  • オープンデータと官民共創:台湾のマスク在庫マップを例に、行政が信頼できるデータを公開し市民・民間がアプリを作る官民共創モデルの有効性について
  • 行政モデルの転換:中身がブラックボックスなメニュー選択型の「自動販売機モデル」から、民間へデータや道具を提供する「サービスプラットフォーム」へのシフトも提唱
  • 生成AI時代の変化と課題:
    • AIの学習源として行政オープンデータの信頼価値が上昇。AIのハルシネーションを防ぐには構造化やメタデータ整備が必須
    • 生成AIやノーコードにより誰もが開発可能となる「技術の民主化」が進み、「何を作るか」という市民目線が問われる新フェーズへ突入
  • まとめ:オープンデータはコストではなく「地域の未来への投資」。
  • また、金沢でのイベント「やり直せシビックテック」のお話もありました。

【BODIKセッション】公益財団法人九州先端科学技術研究所(ISIT) チーフ・イノベーション・アーキテクト 坂本 好夫

  • BODIKの役割と一貫支援: 自治体向けオープンデータサイト(ODCS)の無償提供やAPI化、データ整形ツールの提供など、データの公開から活用までを一貫して支援
  • 活用事例の創出と循環: 単なるデータ公開から、民間やシビックテックが実際に使ってフィードバックが得られる「活用事例の創出・循環」へシフト
  • AIアクセスの急増: Webアクセスの約半数がAIボット等であり、人間向けから「AIが正確に理解できるオープンデータ基盤」への転換が必要
  • ハルシネーション防止とメタデータ: 生成AIの誤回答を防ぐため、定義や更新日などの標準化されたメタデータ付与や機械判読性の向上が必須
  • 自治体向け品質確認ツール: データの切れや更新停止を検出する確認ツール等を提供し、信頼性の高いデータ保持をサポート
  • 生成AIによるデータ整備自動化: AIを活用してメタデータ自動付与やクレンジングを自動化し、行政のデータ作成自体をAIが補助する仕組み(AI公務員)構想を提示
  • 100年後への正しいデータ継承: 将来人々がAIに地域情報を尋ねた際、正しい歴史や情報が伝わるよう、今から正確な行政データを蓄積・保存する重要性を強調
  • シビックテックとの官民共創: プラットフォームを活かすため、市民・開発者と連携して活用事例を増やし、データを育てる姿勢が不可

【LT(ライトニングトーク)大会】ゆるい持ち寄り小話し(身の回りの生成AI活用例)

このLTの時間帯は、パネルセッション的な席にレイアウトし、LTされる方と同じ壇上に福島さん、坂本さん、福岡市のエンジニアフレンドリーシティ福岡事務局の駒田さんに並んでいただきましたが、会場参加者みなさんとディスカッションできるよう、会場全体にマイクを配置しました。LTされる方は募集maxの12名となり、ディスカッション含めお一人10分としても2時間!。LTの内容を伺って、パネラー含め会場全体で疑問点やもっと知りたい点をディスカッションしながら、みんなで理解を深めていきました。

LTをいただいた皆様の話題ポイントは次のとおりです

1.熊谷さん(福岡市)
  • テーマ: オープンデータとデータ前処理の課題、可視化ツールの活用
  • 概要: 業務やシビックテック活動でTableau等のBIツールやAIを活用する立場から、データ活用の8割が「データの発見と前処理(整形式への変換)」に費やされている現状を指摘
  • 太宰府市のクーリングシェルター案内や福岡市の屋台情報・ダム水量データの可視化事例を紹介し、結合セルや余計な集計行のない「AI・BIが読みやすいオープンデータづくり」の重要性
2.野中さん(ISIT)
  • テーマ: 地震災害時における自治体情報の自動収集・分類サイトの構築
  • 概要: 熊本地震発生時、デマを防ぎ信頼できる情報を届けるため、県内45市町村の公式サイトを10分ごとに巡回(クローリング)するサイトを翌日夕方に迅速構築
  • 避難所・給水・ボランティア・ゴミ出し等の情報をAIで自動分類・一元化し、ワードクラウド等で時期ごとのニーズ変化を可視化
  • 蓄積データを今後の防災訓練や情報発信に活かす構想を発表
3.犬丸さん(飯塚東町商店街)
  • テーマ: 当事者エンジニアによるバイブコーディングと人流計測・地域アプリ開発
  • 概要: 元ITエンジニアで、現在は商店街で駄菓子屋&ソフトクリーム屋を営む当事者として登壇
  • 安価なAndroidタブレットとバイブコーディングでローカル人流計測アプリを作成し、イベント後の人の流れを可視化
  • さらに子育て世代と店舗をつなぐLINE連動アプリ「街け」を開発し、AIと過去の経験を組み合わせることで課題発見から実装・計測までのサイクルを現場で高速に回せる強みを提示
4. 髙野さん(ISIT)
  • テーマ: サイバーフィジカルシステム(お地蔵さん構想)と3Dプリンター・AI協働
  • 概要: ICTとオープンデータによる地域支援(お地蔵さん構想)を目指す研究の一環として、小型PC(サイバーデッキ)を制作
  • 3DプリンターとAI(MCPやBlenderの指導)を活用して自作モデルの修正と印刷を重ねた体験を紹介し、AI任せにするだけでなく人間自身も知識を補いながらAIと協働することの大切さ
  • また、福岡市繁華街のAIカメラ人流オープンデータについても説明
5.安田さん(CODE for GIFU)
  • テーマ: 「AIは最高の叩き台職人」アプリ開発とアイデア出しの事例
  • 概要: 東大の「シビックテックデザイン講座」にて、コミュニティに参加しづらい理由やタイプを診断する「家猫(いえねこ)」アプリを開発
  • ゼロから1を作る着手コストを削減するため、AIに「50点の叩き台」を作らせて対話(壁打ち)しながらブラッシュアップする手法を解説
  • 人間は最後の仕上げやストーリー設計、発表準備に集中すべき
6.松野さん(シビックテック講座)
  • テーマ: 非エンジニア(広報・マーケター)によるAIを活用したアプリ開発
  • 概要: 本職は教育系コンサル会社の広報・マーケティング責任者で、プログラミング経験はゼロ
  • シビックテックデザイン講座に参加し、AIとの対話とコピペのみで1週間でアプリを開発
  • 「誰にどう使ってほしいか」というマーケティング思考や広報のノウハウをAIパートナーと掛け合わせることで、技術的ハードルを越えて価値を生み出せた体験を共有
7.こじももさん(シビックテック講座)
  • テーマ: 生成AI(楽曲・動画生成)を活用した「学び・暗記」のアウトプット革新
  • 概要: 都市計画コンサルタントの傍ら、AI楽曲・動画生成ツール(Suno等)を活用して「徳川家康の交通量調査ソング」「宅建の相続問題ソング」「技術士・国土交通白書ラップ」などを制作
  • 情報量の多い学習内容や資格試験の重要語句・ストーリーをラップに乗せることで、楽しく記憶・定着させる新たな学習アウトプット手法を提案
8.Pen(菅原洋介) さん(宮城)
  • テーマ: 生成AIが変える障害者の働き方と能力の評価軸
  • 概要: 脳性まひによる障害で手足・言葉が不自由なため、生成AIで作成したスライドと自動音声(約1時間で作成)で登壇
  • これまでの「タイピングや操作の速さ」という能力の物差しが、AIの登場により「何を解決したいか」「AIにどう頼むか(思考力)」へ変化
  • 身体的制約を超えて成果物で正当に評価される社会への期待と、障害者雇用における環境整備の重要性
9.太田さん(シビックテック埼玉 / Code for Cat)
  • テーマ: Facebookの投稿記録から生成AIを活用したWebアーカイブの再構築
  • 概要: 長年のコミュニティ活動の告知や記録がFacebookページ・グループ内に埋もれて流れてしまう課題に対し、ブラウザスクロールによるデータ取得とAI(Deep Research等)を活用して過去投稿を自動収集・整理
  • MarkdownとGitHub Pagesを用いてサーバーレスで年表・ブログ形式のWebサイトとして過去の活動実績を復元・可視化
10.船守先生(鹿児島大学)
  • テーマ: 鹿児島大学オープンサイエンス(KGOS)と研究データ・論文の地域還元
  • 概要: 鹿児島大学でのオープンサイエンスの取り組みを紹介。大学に蓄積された約18,000件の論文や研究データを墓場まで持って行かず、市町村ごとにマップ上にプロットして可視化する仕組みを構築
  • 探究学習や自治体施策、地域課題解決に向けて、市民や行政・企業に研究データを実際に使ってもらうための連携を呼びかけ
11.吉村さん(福岡)
  • テーマ: 生成AIとオープンデータを掛け合わせた「九州元気マップ」の開発
  • 概要: NPO法人「九州プロレス」の社会貢献活動を応援するため、試合会場・周辺観光地・自治体オープンデータ(BODIK等)を重ね合わせたマップアプリを作成
  • ChatGPTとの壁打ちから「無料イベントの経済効果可視化」という着想を得て、v0やBolt.new等のAI開発ツールを用いて爆速でプロトタイプを構築したプロセスを紹介
12.德永さん(Code for Fukuoka)
  • テーマ: Code for Fukuokaの活動振り返りとライフステージに応じたテーマ変化
  • 概要: 2018年の再スタート以降の活動(公園遊具検索、コロナポータル、タウンテック教育、元寇防塁3D/AR、植物園での数学ワークショップ等)を振り返りました
  • 有事のポータル運用後は行政等へ役割を移す考え方や、自身の子供の成長や時代の変化に合わせてテーマ(教育、著作権指導、文化財の3D化など)を柔軟に変遷させていくシビックテックのあり方を共有

ご参加ありがとうございました

会場では最後に集合写真を撮りました。今回はLT内容がなぜか猫テーマが複数ありましたので、それぞれの「ネコポーズ」でパシャっ!と。

アーカイブについて

  • 満員御礼!。基調講演だけでなく、参加者相互で沢山の事例も聞くことができた今回のイベントのアーカイブは、BODIKコミュニティ(Slack)で公開しています。
  • ぜひBODIKコミュニティ(Slack)にご参加ください。→https://www.bodik.jp/bodik-community/

うえだ